ワイン
ぶどう栽培から醸造まで
高技術が生み出す山形県産ワイン
果樹王国・山形県は
全国有数のワイン生産地
ぶどう生産量全国3位の山形県は、その良質なぶどうを原料とした日本ワインを多く醸造しており、生産量は全国4位。近年、若手醸造家らが新規参入し、県内のワイナリーは14カ所。さらに新たなワイナリーの立ち上げも計画されている。中小規模が多いながらも、自らがぶどう栽培も手がけ、県産ぶどうをほぼ100%使ったワイン造りを行っている。最近では、日本ワインコンクールで好成績を収める銘柄が増え、国内外から注目を集めている。
江戸時代に早くもぶどう栽培をスタートさせたように、山形県はワイン造りの着手も早かった。日本国内での本格生産は文明開化以降の1877年に、先進地山梨で創業した葡萄酒会社が一番手となる。
一方、山形では、山形の初代県令となった三島通庸がワイン造りを奨励したというから、ほぼ同時期に動き出していた訳だ。そして1892年、南陽市赤湯に東北初のワイナリーが誕生。以降、ぶどう産地の周辺に、次々と醸造所ができる。戦時下では、軍用の探知機用に副産物である“酒石酸”を供出するため、質より量を求められた経緯もあった。これを乗り越えた醸造元は、山形の風土や個性を活かしながら、味を磨いてきた。
原料はデラウェア
マスカットベリーAがメイン
「良いワインは良いぶどうから」といわれるが、現在の県産ワインの原料品種は、デラウェアとマスカットベリーAが全体の25%ずつ、この2品種で約半分を占める。つまり山形で伝統的に栽培され、食用としても愛されてきたぶどうが、風土に根付いた加工用ぶどうとして、良質な県産ワインの骨格を成しているのだ。残りの半分は、ワイン用に栽培されているシャルドネやメルロー、カベルネといった品種の他、香り豊かなナイアガラ等も使用。個性的なところでは、広い山林原野に自生する山ぶどうも、古くから原料として活用している。
県産ワインの産出量は増加しているものの、その一方で、ぶどう農家の高齢化などで、将来に向けた原料確保の課題も出てきた。ぶどう栽培にロマンをかけて新規参入する若者たちの意欲に期待したい。
県内のワイナリーで組織する山形県ワイン酒造組合は、1985年から活動を開始。年一回、醸造したワインを持ち寄って研究会を開催し、会社の枠を超えて切磋琢磨してきた。毎年行われる「やまがたワインバルinかみのやま温泉(上山市主催)」へも、組合全社あげての協力体制を敷く。
さらに2008年には、各ワイナリーの若手醸造技術者が結集し「山形ヴィニョロンの会」が新たに発足した。県産ワインの品質・醸造・栽培技術の向上を目的として、行政とも連携。剪定講習会や外部講師を招いての勉強会など、意欲的な活動を進めており、その成果は必ず県産ワインの品質に反映されることだろう。
ラベル表示の新基準の対応とさらなる品質の向上へ
さて、国税庁はワインのラベル表示をわかりやすくするため、2015年10月に「果実酒等の製法品質表示基準」を策定(2018年)。これにより、ワインの産地名を表示する場合は、その地名の範囲内に醸造所があり、その地名の範囲内のぶどうを85%以上使うことが条件となる。
これまでは地名の地域外から原料を調達してきたワイナリーも少なくない。「同じ山形の産地環境が育むぶどうなので、多少地域が変わっても、品質は変わらないはずです」と関係者。それでも「ワインの世界基準に合わせるということで、消費者にとっては、より安心でき、選びやすくなることでしょう」という。今後、銘柄表記や原料収穫地の見直しが図られれば、県産ワインに新たな潮流も生まれてくるかもしれない。
原料ぶどうの栽培から醸造まで、技術の向上はめざましく、山形県産ワインの品質は格段に上がっている。もっと身近に、もっと楽しみたいものだ。