「冬の漬物」
雪深い山形では、昔から冬の保存食として、地域の野菜を活かした味わい豊かな漬物がつくられてきました。あつあつのごはんと漬物は、山形の冬の楽しみの一つ。漬物どころ・山形を代表する冬の漬物をご紹介します。
2019年12月25日掲載
雪深い山形では、昔から冬の保存食として、地域の野菜を活かした味わい豊かな漬物がつくられてきました。あつあつのごはんと漬物は、山形の冬の楽しみの一つ。漬物どころ・山形を代表する冬の漬物をご紹介します。
青菜(せいさい)は高菜と同じアブラナ科の野菜。丈が70〜80cmと大きく、幅広の葉と肉厚の茎が特長で、シャキシャキした歯ざわりと独特の辛みがあります。秋に収穫して、塩漬けした後、ていねいに水洗いし、タレ(醤油・鰹節・昆布など)に漬け込むという独特の製法で、山形の冬を代表する漬物です。炊き立てのごはんを青菜の葉で巻いて食べてもおいしくいただけます。
大きなおにぎりに味噌をぬり、青菜漬を巻いて、香ばしく焼いたのが、庄内地域に古くから伝わる郷土料理「弁慶飯」。名前の由来には、「青菜漬けでおにぎりを巻いた様子が、けさで顔を覆い隠した武蔵坊弁慶の姿に似ている」という説があるとのこと。焼くことで青菜漬の水分がとび、香ばしい味噌の香りが食欲をそそります。味噌と青菜の辛味がよく合い、小腹がすいた時の家庭のおやつとしても、幅広い世代に愛される味です。
青菜、にんじん、だいこんを細かく刻んで漬けたものが「おみ漬」。昔、山形に出入りしていた近江出身の商人が、残った青菜漬の葉先を見てもったいないと他の野菜と一緒に細かく刻んで漬物にしたのが「おみ漬(近江漬)」の始まりと言われています。そのまま食べるのはもちろん、おにぎり、お茶漬け、チャーハン、納豆と合わせてごはんにかけたり…と多彩なバリエーションで楽しむことができる漬物です。
赤かぶ漬けは、昔から甘酢のさっぱり感が好まれ、お茶請けや酒のつまみとして親しまれてきました。冬の食卓の彩りとしても欠かせません。
鶴岡市(旧・温海町)で、昔ながらの焼畑農法で作られている「温海かぶ」は、皮は赤紫色ですが、中は白くてち密な肉質。一度塩漬けにしてから甘酢に漬け込むことで、鮮やかなピンク色に変わります。皮が薄く、きめが細かく、パリッ!とした歯ざわりです。
村山地域北部(尾花沢市や大石田町)では、「南沢かぶ」、「午房野かぶ」、「次年子かぶ」と呼ばれる珍しい赤かぶが作られています。大根のような細長い形で、皮のほか内部にも色素が入るものもあります。
地域の人々が古から守り受け継いできた伝統野菜が数多く残っている山形県。その地域ならではの在来作物が、かぶ漬けのバリエーションをいっそう豊かにしています。
雪菜は、収穫後雪の中で育てる珍しい野菜。雪の中で自身の葉を栄養源に生長し続け、30cmほどになった黄白色の花茎を収穫します。ふすべる≠ニは熱湯にくぐすことを意味し、その後密封することがポイント。ピリリ!と爽やかな辛みが生まれ、これを浅漬けにしたのが「ふすべ漬」。冬場の野菜不足に対応した生活の知恵でもあります。
・山形のうまいもの(漬物)
http://nmai.org/crops/umaimono/local/tsukemono.html